中性子放射化分析について

中性子放射化分析は非常に対象物の検出感度が高く、微量成分の定量に用いるのに適しています。

この分析方法は、中性子を対象に照射することで生成される励起核種からγ線などの放射線をGe半導体検出器などで検出する方法です。

この方法のメリットは二つあります。

①試料に対する詳細な情報を得ることが出来る。
Geのε値は3.0eV程度なので、非常にエネルギー分解能にも優れているうえ、γ線のエネルギー値から波高分析すれば、多元素を同時分析することが出来るのです。


②やり直しが効く。
後から多少の非放射性物質が混入しても、計測が可能であること、また核反応をもとにしているので、化学分析が困難な元素でも定量することが出来ます。

また、もし試料の一部を失った場合は、担体を用いた補正を行うことも可能です。要はミスったらその分後で修正出来るということです。

つまり、ほんのわずかな成分を得たい時に、化学分析だととてもめんどくさくなるところを比較的簡単に定量出来てしまうのです。

欠点としては、

①精度が低い
…核反応をもとにしているので、二次反応を引き起こす可能性があります。また、試料の厚さによっては、自己しゃへいが発生して減衰してしまう。その為、精度が低いことが挙げられます。

②高価な原子炉や中性子発生源が必要である。
…その為研究所のようなところでお願いして使わせてもらうくらいしかないと思います。放医研にはあったな。。

別の方法にPIXE法(Particle Induced X-ray Emission)というものがあります。

試料にイオンビームを照射した際に出てくる特性X線を検出することで定量する方法です。

これは特性X線が発生することをもとにしているので、原子番号が32~33以降の重金属元素の分析に適していると思われます。(ちょうどGeやAsあたりがオージェ電子と特性X線が同じ割合で発生する。)

K-X線の発生する割合をWkとすると、

Wk= Z^4/Z^4+Ak ≒1/1+(32.53/Z)^4

(Z^4:K殻光電効果に引き続きKX線を放射する割合
Ak:オージェ収量、K殻光電効果に引き続きオージェ電子を放出する割合)

となるので、原子番号Zが大きくなればなるほど、Wkの割合は増えていきます。
分母を考えるとだいたい32~33あたりでWk=1/2になりますね。

特性X線のエネルギーは元素ごとに特有であるため、Na~Uまでの多元素を同時分析することが出来ます。

また、イオンビームを小さくすれば細胞中の微量元素分析を行うことも出来ます。




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