分子イメージング:PET、SPECT

ちょっと、一種に向けて学んだことを整理していこうとかなと思います。間違ってたら言って下さいw

分子イメージングとは?

分子の働きを可視化することで、生化学的な現象を解明し、より的確な診断へとつなげることが目的です。

CTのような検出器で放射線核種から放出される数百kevの放射線を検出し、画像を作ります。このような検出器をγ線を検出するガンマカメラと言います。

CTとの違いは、検出するエネルギー(電子ボルト)の大きさが違うのと、身体の内部から360°方向に放出されるエネルギーを検出しているところに、違いがあると思います。

断層画像や体全体の粗い画像として描出し、身体の各器官の機能がどうなっているのか、腫瘍がどうなっているのかを知ることが出来ます。

放射線核種をそのまま身体に入れて大丈夫なの?という話も出てくると思いますが、有効半減期が小さい=代謝されたり、核種がなくなって身体に残っていても無害になる、ものを使っているので、身体に大きなダメージはありません。

また、入れるときは、アミノ基などを回りにくっつけた錯体という状態で取り込ませたり、身体の中にある分子と同じ元素と交換した標識化合物を用います。金属元素として代謝して身体に害をもたらす、、ということが無いようになっています。


こうした、経過観察をもとに次はどんな風に治療を行っていくか、分割照射の量をどうコントロールしていくのかなどを決めていきます。

PETやSPECTの標識化合物と似たようなものでトレーサー核種というものがありますが、これは、画像から検出するのでなく、ラジオイムノアッセイのように試料採取によって、検出値を得る方法です。

試験管内(in vitro)で液シン(液体シンチレータ)などで、溶媒と混合させて検出しているのだと思います。(因みに,最近はラジオイムノアッセイはI標識化合物が出す放射線が身体にダメージを与えるので、あまり行われなくなっているそうです。)

分子イメージング:PETとSPECT

分子イメージングには、主にPETとSPECTがあります。


PETはβ+崩壊によって放出される陽電子の消滅放射を利用した断層撮影です。β+崩壊は主に質量数(中性子数)が、安定核種より少なく、半減期が比較的短かい核種に主に起こる壊変現象です。陽子が中性子になることで、陽電子とニュートリノを放出して起こります。

p->n+e++ν

この陽電子はある一定距離(飛程)において、運動エネルギーを失うと反粒子である陰電子と結合し、二つのγ線を180°方向に放出して消滅します。(エネルギーは電子の静止エネルギー=511kev)

PETは特にがん治療の経過観察の為に使われるようです。腫瘍がよく代謝する物質(ブドウ糖)に、18Fを標識した、[18F]-FDG(フルオロデオキシグルコース)などを用いて、身体の内部を色分けしてどこに腫瘍があるかを見分けます。


治療後に腫瘍が減っていたら、がん治療の成果が大きかったということですよね。

これを利用して、180°方向に発生したγ線を検出値で同時計数して、核種の身体内の位置を特定し、腫瘍の場所を特定し治療計画を作ったりします。

一方、SPECTは核異性体転移により発生するγ線のSingle Photon(単光子)を検出します。放出されるγ線のエネルギーは核種によりまちまちですが、99Moから作られる99mTcが主流で、141kevのエネルギーが放出されます。(これは多分頻出)

(因みに、T=66時間の99MoとT=6時間の99mTcは、親核種の半減期から、親と娘の減衰曲線が平衡状態になる、過渡平衡の関係にあります。→永続平衡)


SPECTは、身体のどの部位に核種が集まっているのかを粗い画像から特定するのが主です。

例えば、腎臓に標識化合物が残っていれば、それは腎の代謝機能が悪いということを示していますし、骨シンチグラフィーは、67Ga骨に癌が転移していたり、その他の疾患にかかっていないかを見る為に有用だったりします。骨転移の緩和ケアには、また別の放射線核種を用います。


この時利用するのがメタストロンという薬剤で、骨に集積し易いストロンチウムを用いた薬剤を投与することがあります。事例はこちら)

ただし、細かい代謝の情報まで追うことが出来ないので、全体の傾向を捉えるのでしょうか。。

PETとSPECTは原理が似ているように見えて、実際の目的は、かなり違う様です。


最近では、PET-CTによる診断が2012年に保険適用になったそうで、今後利用が増えていくかも知れません。

ただ、診療報酬表を見たところ、PETの方が診療点数が数倍違っています。確かに、FDGを作るためにサイクロトロンのような加速器を使っています。また、加速器で得られた核種を有機化合物に標識させる為に、無菌室で精度高く化学反応を起こす必要があるのです。放医研に先日見学に伺いましたが、とても大変そうです。作業準備にも利用する薬剤、モダリティにもお金がかかっている大変な診断方法だな、、と感じます。

だからこそ、そうした作業、原理については知っておかなければいけないなと思います。

コメント

このブログの人気の投稿

ポジトロン核種・サイクロトロン核種の覚え方

GM計数管のプラトー特性:スケーラーを使って

体表指標